【記録・転載】KINKOU9.17

ゼドのコミックが11月に来るので保存しておきます

ゼド:影の頭領

「均衡は愚者の教えなり」

~ ゼド
無慈悲で非情なゼドは、ノクサスの侵略者たちを追い出すためにアイオニアの伝統的な魔法と武術を軍事利用することを目的とした組織、「影の一団」の頭領である。戦争のさなか、追い込まれた彼は強力だが危険な穢れをもたらす邪悪な霊界の魔法を使い、秘密の影の形態を解放した。あらゆる禁忌の術を身に付けたゼドは、自分の祖国と自分が新たに創設した組織の脅威とみなした者は、誰であろうと抹殺する。

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アイオニアの調和のヴェールの下には、調和に置き去りにされた者たちの物語がある。ゼドの物語は、幼いころ「均衡の守人」の拠点の冷たい階段に捨てられたところから始まる。

大師範クショーその人に直々に迎え入れられたゼドは、古めかしい寺院の中に自らの居場所を見出した。彼は均衡の守人の霊的教義の理解に専念し、戦闘実習でも座学でも瞬く間に同輩との差を広げていった。にもかかわらず彼の存在をかすませる者がいた。師の息子、シェンである。ゼドの情熱は体得した技を通じて輝いたが、彼はシェンのような感情の安定を欠いていた。だがそうした違いはあっても、二人の門徒は兄弟同然の仲となった。

彼らはやがて師と共に、悪名高き「黄金の悪魔」を追跡すべく旅立った。恐れられていたこの怪物はついに捕らえられることになったのだが、その正体はカダ・ジンという名のごく普通の男であった。若きゼドは剣を高く掲げてジンに歩み寄ったが、クショーはゼドを止め、ジンを投獄するように命じた。

寺院に戻ったゼドの心には鬱憤が溜まっていき、勉学にも身が入らなくなった。彼はジンの犯した凄惨な殺人の記憶にさいなまれ、アイオニアとノクサス帝国の間の緊張が高まると、その幻滅は一層激しいものとなった。そしてシェンが父親の冷静さを身につけつつある一方で、ゼドは均衡などというもったいぶった思想のせいで悪を追及することを阻まれるのを拒んだ。

彼は寺院にある秘密の地下墓地深くへ歩み入り、そこで装飾の施された黒い匣(はこ)を発見した。そして組織の師範格以外には禁じられていることを知りながらも、匣の中身を覗いたのである。

闇がゼドの精神を包み、彼の鬱屈した感情に弱者への軽蔑という餌を与え、太古の黒魔術の存在をほのめかした。

寺院の灯の元へ戻ったゼドは、大師範クショーに面と向かって訴えた。ゼドは均衡の守人の武力を残らず動員してノクサスの侵略軍を討つよう進言した。クショーがこれを拒むと、ゼドは自分を育ててきた組織に背を向けた。

均衡の守人の教義による縛めから解放された彼は、ノクサスに対抗する戦士の集団を育成した。故郷を脅かす者にも、故郷を守るために立ち上がらぬ者にも、容赦なく死を与える――忠誠を誓うことを拒んだ地元のヴァスタヤに対してもそれは同じであった。ゼドは信奉者に戦の熱狂に身を投じるよう促したが、あの黒い匣がなければ野望に見合うだけの能力を手に入れられないことを悟るのに時間はかからなかった。

新たに修行者をかき集めたゼドが均衡の守人の寺院に戻ると、クショーが待ち構えていた。老人はゼドの足元に自分の武器を置き、かつての弟子に闇と決別して均衡の道を歩むよう諭した。

しばらくして、ゼドは再び寺院の階段に姿を現した。片方の手には匣を握りしめ、もう片方の手には血の滴る剣を握っていた。

均衡の守人は衝撃のあまり身じろぎもできず、ゼドの手兵はそんな彼らを次々に斬り伏せていった。そしてゼドは寺院全体を掌握し、「影の一団」を立ち上げて闇の武術を広めるようになったのである。彼らは怪しげな刺青を施し、闇に包まれた己の分身と並んで戦う術を学んだ。

ゼドはノクサスとの戦争がまだ続いており、アイオニア人に多大な苦しみをもたらしていることを利用した。エプール川の近くで起きた大虐殺の後で、彼は農夫の鎌を振り回すノクサス人の少年兵ケインと出会った。ゼドは少年の姿に、研ぎ澄まされるのを待つ武器の姿を重ね合わせ、彼を直弟子として迎え入れた。この若き修行者のなかに、自分と同じ純粋な目的意識をみたからである。彼がケインのなかに見出したのは、影の一団の未来であった。

シェンやいくつもの地方に分散している残りの均衡の守人は、ゼドと和解こそしなかったものの、戦争の余波を受けて不本意ながらも協定を結んだ。ゼドは、自分の行いはなかったことになどできないと理解していた。

ここ数年の間に、「始まりの地」の調和に乱れが生じたことが明らかになっている。それは永久的なものかもしれない。しかし、ゼドにとって霊的調和など重要なことではない――アイオニアの勝利のために必要なことをする、それだけなのだ。

シェン:黄昏の瞳

「恐怖、嫌悪、愛などにその目を曇らされること無かれ – 均衡を乱そうとする全ての感情に」

~ シェン
シェンは「均衡の守人」として知られるアイオニアの秘密の戦士たちの長「黄昏の瞳」であり、全ての感情、偏見、自尊心などの迷いから逃れるため、霊的領域と物質世界の間に存在する見えざる道を感情に左右されることなく歩み続けている。彼は二つの世界の均衡を保つという任務を託されており、それを脅かそうとする者には鋼の刀と魔術の力で挑む。

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シェンは霊的な世界と定命の世界のどちらにも属さない謎の存在である。ナヴォリ北部で最も敬愛される一族に生まれた彼だが、父親が「黄昏の瞳」を務めていたことから、「均衡の守人」としての行く末が定められた。

大師範クショーの息子であるシェンは組織の文化に親しんで育ち、その教えはアイオニアの夕日と同じくらい身近なものとなっていた。彼は「大樹の剪定」の必要性と「太陽の経路」の決断力を理解し、そして何よりも「星々の観照」の叡智を学んだ。彼は少年期を瞑想と勉学に捧げ、教師からは一様に模範的生徒と目された。

彼にとって最も親しい友であり、組手で彼に敵う唯一の相手は、ゼドという若き修行者だった。彼らは兄弟同然に育ち、しばしば互いに夢や希望を打ち明けた。物事を新しい視点から眺めたいとき、シェンはゼドに意見を求めるのが常だった。こうして二人は、均衡の守人のなかで誰よりも期待のかかる門弟として知られるようになった。

二人の技量に磨きがかかってきたのを見て、クショーは彼らを危険な任務に連れ出すようになった。そのひとつがジウン地方を悩ませていた「黄金の悪魔」の討伐である。二人は何年をも捜索に費やしたが、無数の凄惨な遺体を発見した後もシェンの熱意は衰えなかった。そしてついに「悪魔」を捕らえるときがきた。その正体はカダ・ジンという、旅芸人一座の裏方だった。大師範クショーはその犯罪者を処刑することはせず、投獄するよう命じた。

彼もゼドもその殺人鬼にはもっと重い罰を課すべきだと考えていたが、シェンは父親の判断を受け入れた。シェン自身は「黄昏の瞳」の冷静さを身につけるべく努力していたが、激しく憤慨するゼドをなだめるまではできなかった。

ノクサスによる侵略が「始まりの地」の平和を脅かしたときでさえ、シェンは傍観するクショーを消極的ながらも支持した。ゼドが均衡の守人を見限って戦いに加わったときも、シェンは寺院に留まった。

程なく、多くの地方が敵によって制圧された。それでもシェンはアイオニアの霊的調和を維持することに力を注いでいた。そして故郷から遠く離れていたあるとき、彼は均衡の守人の内部に生じた激しい乱れを感じた。慌ただしく戻った彼は、その血なまぐさい反乱の生き残りたちを発見し、ゼドが自ら弟子を育成して寺院を占拠したことを知った。

そして最悪にも、かつて兄弟のように思っていたその男の手によって、彼の父親は殺されていた。

苦悩を抑えながら、シェンは均衡の守人の生き残りを率いて安全な山岳地帯へと逃れた。彼は父親の気を宿した刀を手に取り、「黄昏の瞳」の称号を継いだ。彼の役割は復讐を遂げることではなく、組織を再編することだ。シェンは核となる教義に従いながら、組織の力を取り戻すことを目指し、人々を集め訓練を始めた。

計り知れない才能を示す修行者が一人いた。シェンはアカリ・ジョーメン・テシというその少女を指導し、隠密と計略の技を身につけさせた。彼女の母親メイームは「影の拳」としてクショーと並び立つ人物であり、娘も同じ道を歩むものと思われた。それでもシェンは、アカリが宿敵に対して反撃しようとするたびに自制を促すのだった。

ついにノクサスが撤退すると、アイオニア人の多くは抵抗運動の勝利を祝ったが、シェンをはじめとする他の者たちは、戦争のもたらした苦しみに耐えなければならなかった。彼は責務を全うしながらも、内面ではゼドへの憎しみと戦い、自分に長としての力量があるのかを問うた。何年にも及んだ紛争の痛手は「始まりの地」に重くのしかかり、シェンは組織を再興しても均衡を取り戻すことができるのか確信を持つことができなかった。

アカリは新たな「影の拳」となったが、その彼女でさえ離れていくように感じられた。やがて彼女は表立ってシェンの教えを非難すると、組織を去ってしまった。

シェンは瞑想し、星々を観照して理解した――アカリは自分の道を探さねばならなかったのだ、そしてそれは均衡の守人も同じなのだと。

目に見えぬ霊的領域での苦闘の合間に、シェンは自らの信念の価値について考えを巡らせることがある。彼は伝統を守ることをなにより優先し、己の感情にその邪魔をさせることは一度としてなかった。それでも思うのだ。一体どれほどの間、独りで二つの世界を往き来するのだろうか。一方の世界がもう一方を破壊してしまうまでに、と。

ジン:孤高の芸術家

「芸術にはある種の感性が求められるのだよ……残虐性というね」

~ ジン
ジンは殺人を芸術であると信じてやまないサイコパスである。かつてアイオニアの牢獄に囚われていた緻密で周到な連続殺人犯は、同国の最高評議会の暗部により釈放され、彼らの陰謀を実行する暗殺者となった。ジンにとって、銃とは絵筆に他ならない。その筆先から生み出される作品は芸術的なまでに残酷であり、犠牲者とオーディエンスは身を震わせながら見ていることしかできない。身の毛もよだつ戯曲を上演することに歪んだ愉悦を覚える彼は、“恐怖”という強烈なメッセージを世に伝えるのに最適なアーティストなのだ。

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ジンは殺人を芸術であると信じてやまないサイコパスである。かつてアイオニアの牢獄に囚われていたこの緻密で周到な連続殺人犯は、同国の最高評議会の暗部により釈放され、彼らの陰謀を実行する暗殺者となった。ジンにとって、銃とは絵筆に他ならない。その筆先から生み出される作品は芸術的なまでに残酷であり、犠牲者とオーディエンスは身を震わせながら見ていることしかできない。身の毛もよだつ戯曲を上演することに歪んだ愉悦を覚える彼は、“恐怖”という強烈なメッセージを世に伝えるのに最適なアーティストなのだ。

アイオニア南部にある山地では長年、悪名高き“黄金の悪魔”に悩まされてきた。怪物はジウン地方のあちらこちらで旅人や、時には農場を丸ごと襲い、虐殺して、遺体を「展示」した。民兵が森という森を捜索し、各町ではデーモンハンターを雇い、ウージューの達人たちが山道を巡回したが、いずれもこの怪物の所業を止めるには至らなかった。

ついに打つ手をなくしたジウンの評議会は、大師範クショーに使者を送り、助けを求めた。ジウンの窮地を耳にすると、クショーは適当な理由をでっちあげてこの嘆願を断ってしまう。ところがその一週間後、クショーは息子シェン、そして有望な弟子であるゼドとともに、商人になりすましてジウンへと向かった。密かに、数えきれないほどの悲しみに暮れる遺族らに会い、凄惨な殺害現場を徹底的に調べ、それぞれの事件を繋ぐ手掛かりや規則性がないか探した。

彼らはこの調査に4年もの歳月と労力を費やした。その間に、3人の男たちはすっかりと変貌してしまっていた。クショーはその有名な赤毛を白くし、豊かな機知とユーモアで知られたシェンは硬く顔をこわばらせ、クショーの寺院で最も頭脳明晰とされたゼドでさえも、学びに躓くようになっていた。しかし彼らは、とうとう一連の事件にある傾向があることを掴んだ。その時大師範クショーは言ったという――善や悪は真実などではない。両者はともに人から生まれ、それぞれの目に映る陰影の濃さは異なるのだ、と。

数々の演劇や叙事詩に描かれている通り、“黄金の悪魔”の捕獲は、偉大なる大師範クショーの輝かしい経歴において7つ目の、そして最後の偉業となった。ジョム・パス村の花祭り前日、クショーは著名な書道家に扮し、招かれた他の芸術家たちの中に紛れ込んだ。そして、彼は待った。このような凄惨な事件を引き起こすのは邪悪なるものの仕業に違いない、そう誰もが思い込んでいた。だがクショーはそれこそが盲点であり、実はこの殺人鬼はただの人間であることを突き止めていた。いまやその名を馳せる“黄金の悪魔”の正体は、ジウンの旅芝居一座や歌劇場の裏方で働くカダ・ジンという、ごく普通の男だった。

3人はジンを捕らえた。若きゼドは、このうずくまって怯える男の息の根を止めようと歩み寄ったが、クショーはそれを止めた。ジンがこれまでしてきた恐るべき行いは許されるものではない。だが伝説の大師範は、この殺人鬼を生きたまま取り押さえ、ツーラ牢獄に投獄すべきだと判断した。シェンは反対したが、父の感情に依らない、論理的な判断を受け入れた。これまで目撃してきた数々の殺害現場に心乱され、苛まれていたゼドは、大師範の慈悲など理解することも受け入れることもできなかった。そしてこのことがきっかけで、彼の心に大師範への反感が芽生えだしたのだと噂されている。

長いことツーラに投獄されてはいたが、礼儀正しく、内向的なカダ・ジンは、その間本当の自分を露わにすることはなかった。彼は本名すら口にすることはなかったという。だが牢獄で囚人らを指導する僧たちによると、ジンは優秀な生徒であり、鍛冶、作詞、舞踊などといった多くの科目でその能力を見せつけたとして記録している。ただし看守も僧も、彼の病的な嗜好を治す術は何一つとして見つけられなかった。

牢獄の外では、アイオニアは混乱を極めていた。ノクサス帝国の侵略により、アイオニアの内政はその安定を失っていたのだ。戦争は穏やかだった国家の凶暴性を目覚めさせた。権力に目がくらみ、秘密裏に手を組んだ徒党らが影響力をかざそうと争い始めたことで、かのクショーが説き、守り抜いてきたアイオニアの平和と均衡は、簡単に砕け散ってしまった。最高評議会に潜む秘密結社は忍者やウージューの剣士たちに対抗する力を必要としており、密かにジンを釈放し、彼を恐怖の殺人兵器として利用しようと企てた。

カシューリ武器庫の最新兵器の使用を許され、ほぼ無限の活動資金を保証されたジンは、その“芸術活動”の幅をさらに広げている。彼の作品は各国の要人たちや、アイオニアの政界の裏に圧倒的な恐怖をもたらした。だが、この脚光に飢えたシリアルキラーが、いつまでも裏方の仕事のみで満足していられるとは考えないほうがいいだろう。

ケイン:無情の影

「あの子供はもういない。ここにいるのは殺し屋だ」

~ ケイン
恐るべき影の魔術の卓越した使い手であるシエダ・ケイン。彼は己の真の運命――いつの日か自分が「影の一団」を率い、アイオニアが覇権を握る新時代を拓く、という未来のために戦っている。彼が手にする、自我を持つダーキンの武器「ラースト」はケインの心身を着実に侵しつつあるが、気に留める様子はない。あり得る結末はただ二つ。ケインが強い意志で武器をねじ伏せるか、または邪悪な武器に完全に乗っ取られ、ルーンテラを滅亡の道へと誘う扉を開くかだ。

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元々ノクサスの生まれであるシエダ・ケインは、兵士として徴集された子供の一人であった。ボラム・ダークウィルの統治する帝国においてすら、少年を兵として用いるのは邪悪な指揮官にかぎられた。ナヴォリのプラシディウムでの凄惨な戦いのあと、ノクサスの侵略戦争は予定したとおり長期的な消耗戦へと姿を変えていた。それはアイオニア人の情を弱点として利用する作戦だった――アイオニアの戦士たちは、幼く無垢な子供たちを攻撃する前に躊躇するはずだ、と。そのようにして、与えられた剣を持ち上げるのも精一杯だったケインの初陣は、そのまま彼の最期となるはずだった。

バール地方の侵攻に乗り出したノクサス軍はエプール川の河口に上陸した。ケインたち少年兵は斬り込み隊として、侵略者から我が家を守ろうと迎え撃つ、統制の取れていない地元民の集団と戦うことを強いられた。仲間の少年たちが斬り伏せられ、あるいは戦場から逃亡する一方で、ケインは一切の恐れを見せなかった。重い剣を投げ捨て、落ちていた草刈り鎌を拾い上げると、驚いているアイオニア人たちに立ち向かった――それと同時に、ノクサスの正規軍が敵の側面へ奇襲をかけたのだ。

それは凄まじい殺戮だった。農民も、狩人も――さらには数人のヴァスタヤさえも――無造作に殺されていった。

それから二日後、南部地方にこの話が広まり、「影の一団」はその凄惨な現場を訪れた。団の頭領であるゼドには、この地域にいかなる戦術的重要性もないことはわかりきっていた。この虐殺の目的はメッセージを伝えることだったのだ。「ノクサスは容赦しない」というメッセージを。

ゼドの目に、キラリと鋼のきらめきが映った。泥の中に身を隠していたせいぜい10歳ほどの子供が、血まみれの拳が白くなるほど強く握りしめたボロボロの鎌で、暗殺の達人であるゼドを狙っていたのだ。少年の目には年齢に似合わない凄まじい苦痛が満ちていたが、同時に歴戦の戦士に匹敵する怒りに燃えていた。その執念は学んで身に着けられるようなものではなかった。ノクサスに使い捨てにされながらも生き延びたその子供の中に、ゼドは武器を見た――少年を死地に送り込んだノクサスにこそ向くべき、抜き身の刃を。そして暗殺者はケインに手を差し伸べ、「影の一団」の徒弟として受け入れたのである。

伝統的には、修行者は自分が選んだ一つの武器を何年もかけて訓練するものだが、ケインはあらゆる武器の扱いを習得した――彼にとってそれらはただの道具であり、彼自身こそが武器だったのだ。また彼は防具のことを動きを邪魔する重荷と見なしており、それらを身に着ける代わりに影をまとい、素早さと隠密の技で敵を殺めることを得意とした。その一瞬の所作は、幸運にも命を取られなかった者たちに恐怖を刻み込んだ。

ケインの逸話が増えていくにつれ、ますます彼は傲慢になった。いつしか自分の力の前に師匠のゼドさえもが精彩を失うに違いない――彼は心の底からそう信じていた。

その尊大さゆえに、ケインは己に課せられた最終試練を快く受け入れた――最近ノクサスで発見されたダーキンの武器を見つけ出し、それがアイオニアの疲弊した守護者たちに向けられないようにすべし、という内容だった。なぜ自分にその任務が与えられるのかと問うことさえせず、ケインは一も二もなくその試練に同意した。そればかりか、他の修行者であれば見つけ次第そんな武器など破壊していたであろうが、「ラースト」の名で知られるその生きた大鎌を、彼は自ら使うことにした。

ケインがその武器をつかんだ瞬間に侵蝕が始まり、両者は互いの存在を懸けた相克状態へと陥った。ラーストは同胞のダーキンの元に舞い戻り、この世界に破壊をもたらすために理想的な宿主を長年待ち続けていたが、ケインも簡単に支配されたりはしない。ゼドが自分を「影の一団」の新たな首領に任命することを確信し、彼はアイオニアに凱旋する。

アカリ:主なき暗殺者

「ヤバそうな格好するなら、中身もヤバくないとね」

~ アカリ
「均衡の守人」であることをやめ、「影の拳」という立場も捨てたアカリは、自分こそ故郷の人々が必要としている武器になろうと決め、独り戦いに挑む。師であるシェンから授かった教えを忘れることなく、アイオニアを襲う敵をひとりずつ、確実に排除すると誓ったのである。アカリは音もなく襲い掛かるが、そのメッセージは誰の耳にも届くだろう――主なき暗殺者を恐れよ、と。

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アイオニアは太古より、活気ある人々と強力な精霊が調和のある暮らしを求める、手つかずの魔法が息づく土地であった。しかしこの平和な釣り合いはたやすく生まれるものではなく、釣り合いを統制する者が必要になるときもある。

「均衡の守人」はアイオニアの神聖な調和を保つために自主的に作られた組織である。その忠実なる修行者は霊的な精神世界と物質世界とを往き来し、両者の間に生まれる紛争を仲裁しつつ、必要とあらば武力をもって介入する。この組織の系譜の一人として――それも高名な「影の拳」メイーム・ジョーメン・テシの娘として生を受けたのがアカリである。メイームとその伴侶であるターノは、「黄昏の瞳」大師範クショーの行き届いた指導のもと、他の均衡の守人たちのなかで娘を育てた。

両親が招集されているときは、組織の誰かが親代わりとしてアカリの面倒をみた。「雷雲の担い手」ケネンは少女と多くの時間を過ごし、手裏剣の技を教え、力よりも速さと敏捷性を重視するよう仕込んだ。大切な娘であるアカリは乾いた砂のように知識を吸収していき、彼女が両親の足跡をたどるであろうことは誰の目にも明らかだった。大師範も息子であるシェンを跡取りに指名したのだ、アカリも新たな世代を率いてアイオニアの調和を保つために身を捧げるだろう――

だが調和とは儚いものである。均衡の守人は分裂してしまった。

ゼドという名の不可測な修行者が戻り、クショーと激しく衝突したかと思うと、血なまぐさい反乱の後に権力を奪い取ってしまったのだ。アカリはメイーム、シェン、ケネン、そして一握りの修行者とともに東の山岳地帯へと逃れた。しかし、ターノは同行しなかった。

均衡の守人を冷酷無比な「影の一団」へと様変わりさせようというゼドの試みは、あと一歩で達成されようとしていた。その一方で新たな「黄昏の瞳」となったシェンは、失われたものを立て直そうと決意し、均衡の守人の基盤となる三つの思想を復活させようと志した。すなわち星々の観照がもたらす純粋な公平性、太陽の経路に基づいた裁き、そして大樹の剪定による不均衡の排除である。数は少なくなってしまったものの、彼らは新たに同志を迎え鍛えることで勢力を盛り返そうと考えた。

14歳になったアカリは新たな「影の拳」として母の跡を継ぐ決意をし、正式に均衡の守人の訓練を受けることとなった。

彼女の戦士としての才は並外れており、鎌も苦無(くない)の扱いもすぐに習得した。他の修行者の多くが有している魔法の能力こそないものの、彼女は自分が「影の拳」にふさわしい存在であることを皆に証明した。時が来れば母もその地位を降り、若き入団者の指導を手伝えるようになるだろう。

だがアカリの心はいつも落ち着かず、その目は世界の様相を見つめていた。均衡の守人と「影の一団」はノクサスのアイオニア侵攻を受けて不本意ながらも協定を結んだが、アカリは自分の故郷がいまだ苦しみ続けていることを理解していた。守人は本当にその目的を果たしているのだろうか、と彼女は問うた。大樹の剪定は、神聖な調和をおびやかす存在を「排除」するためにあったはずだ。だがシェンは辛抱強く自制するよう促すばかりなのだ。

シェンは彼女を引き留め続けた。確かにマントラや瞑想は精神を鎮めてくれるが、そんな空虚な行いで敵を倒すことはできない。彼女の若さと早熟さはやがて露骨な反骨心へと変わっていった。彼女はシェンと口論し、彼を拒絶し、自分のやり方でアイオニアの敵を倒すようになった。

アカリは組織の全員を前にして、均衡の守人など無力だと言い放った。霊的な調和や忍耐力をいくら説いたところでその成果などわずかであると。物質世界のアイオニア人は次々と死んでいるではないか。この世界こそ守るべき世界なのに。彼女は暗殺の技を教え込まれた。ならば暗殺者になってやる。もう組織の導きは必要ない。

これはアカリがひとりで歩まねばならない道だと察し、シェンは争うことなく彼女を行かせた。いつかその道が彼女を連れ戻す日が来るかもしれないが、判断するのは彼女自身だ。

ケネン:雷雲の担い手

「“雷雲の担い手”の鼓動は止まず… それを叩き込まれたものは忘れられずってね」

~ ケネン
ケネンは電光石化の素早さでアイオニアの均衡を保つだけでなく、「均衡の守人」の中で唯一のヨードルでもある。小さな毛皮で覆われた姿とは裏腹に、彼は手裏剣の竜巻と底知れぬ熱意を持ってあらゆる脅威に立ち向かっていく。破壊的な電気エネルギーを浴びせて現れた敵を倒しながら、彼は師匠のシェンとともに霊的領域を巡回している。

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アイオニア諸島には、古代から受け継がれてきた万物の均衡を保つことを務めとする結社が存在する。秩序、混沌、光、闇――彼らの教義によれば、森羅万象の完全な調和こそが、宇宙の正しき在りかたであるという。「均衡の守人」と呼ばれるその結社は、自らの大義を為すために「影の戦士」と呼ばれる三人衆を擁している。ケネンもその戦士の一人として「日輪の追行」という聖務を託されており、「均衡の守人」のもとで大義の遂行に励み続けている。

ケネンはバンドルシティで生まれた。その出産はさながら稲妻のごとしで、最初は子宮から電光石火の勢いで飛び出し、次の瞬間には産婆の手を振り切ってすっ飛んでいったと言われている。ケネンの両親は彼が成長するにつれて落ち着くだろうと思っていたようだが、実際は成長するにつれて、ケネンのエネルギーの暴走には歯止めが効かなくなっていった。その賜物というべきかケネンは凄まじい俊足を身につけるに至ったが、その驚くべき才能とは裏腹に、この頃の彼はさほど世間の注目を集めていなかった (あまりにも足が速かったので、少なくとも誰もこのイタズラ坊主を捕まえられなかった)。ところがある日、彼は賭けに勝つため、プラシディウムの巨大な外壁をまっしぐらに駆け上るという偉業を達成する。この出来事がついに「均衡の守人」たちの耳に届き、ケネンはただちに、そして密かにスカウトされたという次第である。ケネンは“雷雲の担い手”としての役割を気に入っており、世界中の人々に「均衡の守人」の言葉を伝えつつ、均衡を脅かす者たちには罰を与えている。現在ケネンは、同胞であるシェンとアカリの二人と共に、ヴァロランの調和のために暗躍している。

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